100万化合物をPharmacoNetでスクリーニングする
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タンパク質と相互作用する化学的な特徴を手がかりに、多数の化合物から実験で調べる候補を探します。PharmacoNetを使う考え方を学び、環境構築、タンパク質の準備、ZINCライブラリの取得、スクリーニング、上位SDFの抽出の順に進めます。
使用環境
| 項目 | 使用するもの |
|---|---|
| OS | Windows上のWSL2 / Ubuntu。以下のコマンドはUbuntuのターミナルで実行します。 |
| GPU | NVIDIA GPU。Windows側の対応ドライバーが導入され、WSL内でCUDAを使用できる環境。 |
| ソフトウェア | Git、Conda、PharmacoNet(環境名 pmnet) |
| 標的 | CNDP2、PDB ID 4RUH。結合部位は結晶中のBES(鎖A、残基501)の位置で指定します。 |
| 化合物 | ZINC配布の3D SDF。選択したURL一覧の全構造ファイルを取得します。実際の化合物数は取得後に確認します。 |
ファーマコフォアモデリングとスクリーニングとは?
化合物がタンパク質に結合するときには、水素結合や疎水性相互作用などが関わります。こうした相互作用に関わる特徴を、3次元空間での位置とともにまとめたものを「ファーマコフォア」と呼びます。
モデリング:相互作用の特徴をモデルにする
ファーマコフォアモデリングは、結合に関わる特徴の種類と配置を整理して、比較に使えるモデルを作ることです。既知の活性化合物から共通する特徴を探す方法や、タンパク質の結合部位の構造から特徴を予測する方法があります。
スクリーニング:モデルに合う化合物を探す
ファーマコフォアスクリーニングは、化合物の3次元構造をモデルと比べ、特徴の種類や配置がどの程度合うかを調べることです。多数の化合物を比較し、実験で調べる候補を絞ります。
ファーマコフォアとは?
たとえば、水素結合を受け取る部分、水素結合を与える部分、疎水性の部分が、どの位置にあるかに注目します。分子全体の骨格が違っていても、これらの特徴と配置が似ていれば、同じ結合部位に合う候補として探せます。
| 特徴 | 何に注目するか | 代表的な例 |
|---|---|---|
| 水素結合受容体 | 水素結合を受け取る部分 | カルボニル基の酸素 |
| 水素結合供与体 | 水素結合を与える部分 | O–H や N–H |
| 疎水性 | 水となじみにくい部分 | アルキル基 |
| 芳香環 | 芳香環の位置や向き | ベンゼン環 |
| 正・負の電荷 | 電荷を持つ部分の位置 | アンモニウム、カルボキシラート |
「どの特徴を持つか」に加えて、「特徴どうしがどれだけ離れているか」も比較します。たとえば、同じ水素結合受容体と芳香環を持つ2つの化合物でも、その間隔が違えば、同じモデルへの適合度は変わります。
PharmacoNetとは?
PharmacoNet は、タンパク質の結合部位の3次元構造から、深層学習を使ってファーマコフォアモデルを作るオープンソースのツールです。作成したモデルと化合物の特徴・配置を比較し、適合度を点数にして順位を付けます。
原著論文:Seo and Kim, Chemical Science(2024) / 公式GitHub
- 結合部位を3D格子にする:原子の位置と性質を、小さな立方体のマスで表します。論文では1辺32 Åの領域を0.5 Å間隔、64 × 64 × 64の格子にしています。Å(オングストローム)は原子間の距離に使う単位です。
- 深層学習で相互作用の場所を予測する:結合部位の中で、水素結合などを形成しやすいタンパク質側の部分を選び、それに対応する化合物側の特徴がどこに来そうかを領域として予測します。この領域から、特徴の中心と広がりをまとめたモデルを作ります。
- 特徴と距離をグラフで比べる:特徴を「点」、特徴どうしの距離を「線」として表します。同じ種類の特徴を対応させ、距離が大きく食い違う組合せを除きながら、化合物とモデルを照合します。
- 適合度を点数にする:特徴間の距離がモデルにどれだけ合うかを、特徴の種類ごとの重みと合わせて採点し、化合物を並べます。モデル作成はCPUまたはGPU、化合物の採点はCPUで行います。
この教材では、タンパク質 CNDP2(PDB ID 4RUH)から作ったモデルに、ZINC が配布する3次元化合物構造を照らします。PharmacoNetは100万化合物のような大規模ライブラリから候補を絞り込む一次スクリーニングに適しています。ただし、その点数はファーマコフォアへの適合度であり、実際の結合力を測定した値ではありません。候補をある程度絞った後は、分子ドッキングで結合姿勢や相互作用を検討することをお勧めします。ドッキングも予測なので、最終的には実験で活性・結合を確かめます。
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